「マスター、このコーヒー、冷めているよ」「お客さん、今朝からコーヒーは冷めるようになったんですよ」この世界、リアルを追求すると不便になっていく。ここは現世で死を迎えた連中が生前の記憶を仮想人格として保持し、電子的な夢を共有するフィールド――すなわち死後の世界。私立探偵を営むおれは喫茶店『カトレア』で今日も油を売っていた。事務所へ戻ると黒電話が耳障りな音をたてている。依頼か? それが事件の始まりだった。解説・池澤春菜。